サン・ジャックへの道
FRANCE / SPAIN
◉旅の誘い度★★★★★
◉ストレス社会に生きる現代人のための人間賛歌
『赤ちゃんに乾杯』『女はみんな生きている』のフランスの女性監督コリーヌ・セローが、美しい自然と文化遺産が溢れる巡礼路を舞台に、家族の絆、人と人とのふれあいや心の動きを爽やかに描き出した感動作が『サン・ジャックへの道』である。 仲の悪い3兄弟へ、遺産相続の条件として母親が遺した遺言は、スペインの聖地サンティアゴ(サン・ジャク)までの1500キロの巡礼路を一緒に歩く、というもの。長男ピエールは社長であるものの家庭のストレスで薬に依存する生活。長女で教師のクララは、学ぶ気のない学生たちを相手に教える情熱を無くしつつあり、旦那は失業中。弟のクロードは、アルコール漬けで家族からも見放されて一文無し状態。無神論者のうえに歩くことさえも大嫌いなそんな3兄弟が、バックパックだけでなく、身内の問題や世間のしがらみもどっかり背負って、いやいや巡礼の旅に出る。歩き始めた彼らを待っているものは…。
サン・ジャックとはフランス語で聖ヤコブのこと。スペイン語ではサンティアゴとなり、タイトルの「サン・ジャックへの道」とはサンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう巡礼路のことを意味する。[旅に誘う映画004]で取り上げた『星の旅人たち』がピレネー山脈からスタートしていたのに対し、本作はフランス南東部の街ル・ピュイ・アン・ヴレから出発し、中央山地からピレネー山脈を越えてスペインへ入り、ひたすら西へと向かう「ル・ピュイの道」の1500キロコースを描いている。
◉聖地巡礼
スペイン北西部のガリシア地方に位置するサンティアゴ・デ・コンポステーラはエルサレム、ローマと並びキリスト教三大聖地のひとつ。キリストの十二使徒のひとりである聖ヤコブの墓が見つかったとされ、中世以来多くの巡礼者が訪れている。
◉人間たちのドタバタを包み込む自然の美しさ。
「本作ではまず自然の美しさというイメージからスタートし、観客とそれを共有したいという思いで作り上げていった」とコリーヌ・セロー監督が語っているが、フィルムに収められた風景は息を飲むほど美しい。特にル・ピュイ・アン・ヴレからスタートしピレネーを越えるまでの風景は特に印象的で、私自身のフランスのイメージを覆すものだった。
◉サン・ジャックへの道
◎原題:Saint Jacques...La Mecque
◎監督・脚本:コリーヌ・セロー
◎製作:シャルル・ガッソ
◎出演:ミュリエル・ロバン、アルチュス・ド・パンゲルン、ジャン=ピエール・ダルッサン、パスカル・レジティミュス、マリー・ビュネル
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