◉Lsca da Palmeira, Porto, PORTUGAL/ポルト、ポルトガル
シザの記念碑的作品、岬に建つティーハウス&レストラン
◉若き建築家の処女作
アルヴァロ・シザが最初に設計を行ったのが、ボア・ノヴァのティーハウス&レストランである。 レサのスイミング・プールから程近い、小さなチャペルが印象的な岬に隣接して建っている。1963年に完成させた最初のプロジェクトであり、その後も本人の手で改装が行われている。
シザが設計した建造物は、あたかも岬の岩場に寄生するかのようにその地形に巧みに組み込まれ、窓からは海に張り出した岩場越しの絶景が広がる。地形の段差を活かした造りによって、エントランスが上階に、ティーハウスとレストラン部分がその階下に配置されている。海の方へ緩やかな角度で張り出した庇は、強い直射日光を遮るが、窓からの眺望を邪魔しない設計になっている。
TIPS: 水平線を2度意識する演出とは…。
ここを訪れた際、海の方向に向かって造られた階段を上りるが、その途中で階段の最後のステップの直線と水平線が重なり合う一瞬を体験する。そして、エントランスから階下のレストランやティーハウスに向かうために階段を降りるとき、足元ばかり見ていると気がつかないが、目線の先にシザ特有の横長のスリットがあり、そこから水平線を覗くことができる。
白い壁と木部の茶色のコントラストが創り出す、レストランの落ち着いた空間。「若い建築家の処女作ゆえの過剰」が見られるとシザ本人は評価しているが、至るところに彼らしいアイデアが組み込まれていて楽しい。当時主流だったフランク・ロイド・ライトの影響も感じられる。
「家具と建築は一体なのに、クライアントの選択は大抵の場合よくない」とシザは考えている。だからこのティーハウス&レストランにある椅子やテーブル、そしてちいさな灰皿に至るまでが、シザの手によってデザインされているので、そちらにも注目したい。
海に面して建てられたティーハウスは大きなガラス貼り窓があり、海を間近に感じることができる。西に陽が傾くころ、心地の良いソファに座り刻々と移り変わる空の色を眺めながら、ゆったりとくつろいでみたい空間だ。
このティーハウス&レストランの全景を見るには、近くに建つチャペルまで登ってみるといい。レサのスイミングプールにあったのと同様のこの地域独特の丸い砂岩がテトラポットのように建物の周囲を埋め尽くしている様子を見ることができる。その景観を眺めていたら、ポルトガル中部、スペインとの国境近くにあるモンサントを思い出した。その村は巨岩と共存していて、最もポルトガルらしい村とも言われている場所だ。
Casa de Chá da Boa Nova
(Boa Nova Tea House and Restaurant)
◉ボア・ノヴァのティーハウス&レストラン(1958~63年)
◎Architects: Álvaro Siza Vieira
◎https://www.casadechadaboanova.pt/
住所:Avenida da Liberdade nº 1681 4450-718 Leça da Palmeira
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