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My favorite Destination 002 : RYE

◉Rye, UKライ、英国(南イングランド)

ライ、中世の面影を残す、南イングランドで一番美しい町。

マーメイド・イン(写真右)のあるマーメード通り
マーメイド・イン(写真右)のあるマーメード通り

◉ロンドンから南へ、足を延ばして

今回、取り上げるのは中世の町並みが残る古都ライ。ロンドンの喧騒から離れて、緑あふれる田舎でゆったりした時間を楽しもうという提案です。

 

歴史的な建造物だけでなく、洒落たショップやギャラリー、ティールームが軒を連ね、小さいながらも魅力が凝縮している町なので、活動的に散策するのも、ティールームでまったりするのも、いずれの滞在も可能だ。イギリス国内やフランスなどからも多くの観光客が訪れピークシーズンには、旅行者であふれる人気の町である。日本では知名度も低かったが、近年注目されつつある。

◉ライの歩き方

RYE駅を出て目の前の緩やかな坂道を道なりにまっすぐ歩く。駅から南へ延びるマーケットロードからハイ・ストリートを渡りウエスト・ストリートを行けばすぐに、密輸業者の根城になっていたマーメイド・インのあるマーメイド通りにたどり着く。そこには玉石が敷かれた昔ながらの石畳が広がり、中世の雰囲気を色濃く留めた町並みが広がっている。  マーメイド通りを下った先にはツーリスト・インフォメーションを兼ねたヘリテージ・センターがあり、道を挟んだ広場はファーマーズ・マーケットの会場になっている。また、このエリアはストランドキーと呼ばれアンティーク・ショップが集中している。ロンドンから日帰りで訪れられる場所だが、できれば一泊してゆっくり滞在して欲しい町だ。

チュダー調の建物に掲げられた人形の看板(マーメイド・イン)
チュダー調の建物に掲げられた人形の看板(マーメイド・イン)

◉密輸貿易の歴史が刻まれたマーメイド・イン

黒い木部に白壁。壁面を覆い尽くすかのように広がる蔦、そして人魚の看板。この趣のある建物がマーメイド・インである。創業は1420年。18世紀に密輸業者の根城となっていた場所である。その名残はそこかしこにあり、書棚を模した隠し扉があったり、かつて厨房だった場所の煙突には、大人がようやくふたり隠れられるような凹みが残っていたりする。言われてみれば、階段の造りも微妙に折れ曲がり、先を見通せないように設計されている。まるで忍者屋敷のようだ。  

2階にある<ドクター・シンの寝室>はエリザベス皇太后も滞在したという部屋。007の5代目ジェームス・ボンドを演じたピアース・ブロスナンも利用している。彼は映画の中でピアノを演奏するシーンがあり、その練習のためこの部屋にピアノを持ち込んで特訓をした。その際、ピアノの先生だったオーナーの娘さんにレッスンを受けたと、オーナーのジュディスさんが教えてくれた。

マーメイド・インに宿泊した著名人たちのポートレートやサイン。
マーメイド・インに宿泊した著名人たちのポートレートやサイン。
セント・メアリー教会前の通りにはおしゃれなティールームが並ぶ
セント・メアリー教会前の通りにはおしゃれなティールームが並ぶ
かつては海が周囲を取り囲んでいた。
かつては海が周囲を取り囲んでいた。

TEA ROOM

◉アポテーカリー

The Apothecary Coffee House

1 East Street, Rye, East Sussex TN31 7JY

Tel: (0)1797 229157

 

店名にあるとおり<薬局>の雰囲気を残しつつ改装を施した店内。薬箱もインテリアとして活かされている。アンティーク家具などが並び、落ち着きのある雰囲気。ケーキ以外ではペーストリー類も充実している

 



◉港町らしさを探す

町の全容を掴みたいなら、高台にあるセント・メアリー教会を目指そう。教会の時計塔の屋上に登れば、煉瓦色をした家々の屋根の連なりや緩やかに蛇行しながら湾に注ぐロザー川、そしてその先には海岸線も見渡すことができる。なお、この時計塔、動く時計としてはイングランド最古のもののひとついわれている。 港町ライの雰囲気は海鳥が飛んでいたり、運河に船が浮かんでいたりするものの、一般的な港町をイメージして訪れると違和感があるかもしれない。かつては、フランスのモン・サン・ミッシェルのように周囲を海に囲まれていたが、長い年月の間に土砂が堆積して、海は遥か4キロ先に遠のいてしまっているからだ。 2、3時間あれば、ほぼ見つくしてしまうような町の広さだが、アンティーク・ショップやギャラリー、ティールームなどが多く、それらを散策しているだけでも楽しく、時間の経つのを忘れてしまう。

セント・メアリー教会の時計塔からの眺め
セント・メアリー教会の時計塔からの眺め
海ははるか彼方に遠のいてしまっている。
海ははるか彼方に遠のいてしまっている。
カラフルな船が運河に浮ぶ。
カラフルな船が運河に浮ぶ。

◉繁栄を誇った古都で、アンティーク・ハンティング

この町の印象を華やかなものにしているのが、ギャラリーやアンティーク・ショップのウィンドーの数々である。狭いながらもライは繁栄を誇った古都であり、30ものアンティークを扱う店がある。その一つひとつを眺めているだけでも十分楽しいが、宝の山を目前にしてそのまま帰ってしまうのはもったいない。 そうは言っても目利きでない初心者には思い切った買い物は難しい。いきなり高価なアンティークを購入するのではなく、普段から使えるキッチン小物あたりを手始めに覗いてみては…。

商品選びのヒントとして、自分が日頃コレクションしているテーマ(犬、猫、自分のラッキーカラーなど)で探してみるのはどうだろう。たとえアンティークとしての価値があってもなくても、自分が気に入ればそれが本当の<掘り出し物>なのだから。

 


SHOP

■カントリー・ウェイズ/キッチナリア

Country WaysKitchenalia

Strand Quay, Rye, East Sussex TN31 7AY

Tel: (0)1797 227210

 

イギリス製のキッチン用品を中心にガーデン用品や家具なども扱っています。オーナーのジェーンさんが愛情を込めて選び抜いた商品が店内所狭しと並んでいます。小物好きだったらラックごと家に持って帰りたいという衝動に駆られるかもしれないので要注意

■グラス・エトセトラ 

GLASS Etc 

18/22, Rope Walk, Rye, East Sussex TN31 7NA Tel:(0)1797 226600

 

某局の鑑定番組の元となったBBC局『アンティークロードショー』の鑑定士を務めるアンディ・マッコンネルさんの店。アンティーク・グラスの本のhほかに『20世紀のデキャンタ』という書籍も執筆している。さまざまなガラス製品が並べられており、日本人には小ぶりでかわいいデザインのグラスが人気とのこと。



初めてライを訪れたのは、写真家の辻丸純一さんとの同行取材(書籍『ロンドンから南へ。日帰りで訪ねる小さな田舎町』の撮影)のときでした。その後もお気に入りの場所として、同僚とそして家族と訪問を繰り返しています。 

※この原稿は以前、ヴァージン・アトランティック航空のWebサイトに寄稿したものをベースにまとめ直したものです。ライを訪れる場合は、最新情報を入手してください。


◎アクセス

ロンドンのセント・パンクラス駅から高速列車ジェベリン号でアッシュフォード・インターナショナル駅(所要40分)で乗り換えてライ駅(所要23分)へ。


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